ARとはAugmented Reality
の略で,日本語では拡張現実と訳されます.
AR技術は,人間を取り巻く環境に付随する情報を増幅または減衰させることで,文字通り現実空間を拡張する技術のことを指します.
2012年からのスマートフォンの急速な普及により,スマートフォンを所持する人間の位置情報及び環境を簡単に取得できるようになったこと,また何処にいてもインターネットにアクセスできる媒体とインフラが整ったことから,AR技術は陽の目を浴びることとなりました.
現在では商品PRや教育図書など,幅広い場面でAR技術が活躍しています.
AR技術は,何を対象として,またはどういった情報を重ねるかによって種類が異なります. おおまかに分けると,以下の2つのように分けることが出来ます.
この2つのAR技術について説明をします.
以下の図を用いて説明します.
ビジョンベース型AR
は画像認識型ARとも呼ばれ,AR研究が始まった初期から存在する王道のAR手法です.
左にある黒い四角の中に黄色い円がある画像はARマーカー
と呼ばれる,スマートフォンが情報を重ねあわせる為のトリガーとなる画像です.
ARマーカーは一般的に紙に印刷され,適切な光量のある屋内で使用されます.
アプリ側では,「ARマーカーを認識すると中心にスマイリー,右上にハートの画像を重ねる」といったプログラムを作ります.
アプリを起動した状態でARマーカーにカメラをかざすと,右図のように黄色い円の上にスマイリー,そしてハートの画像が重なります.
つまり,ビジョンベース型ARは特定のARマーカーを認識したときにAR体験を提供する手法
と言えます.
以下の図を用いて説明をします.
ロケーションベース型AR
はその名の通り,現実環境をベースとして情報を拡張する,スマートフォンが普及しだした今最も研究が盛んなAR技術です.
季節ハズレですが,クリスマスイベントを例に考えてみましょう.
何も飾り付けがされてないツリーにスマートフォンをかざすと,仮想的に飾り付けがされたツリーを表示するようなアプリを考えてみましょう.
ツリーは立体物であり,見る場所によってはいろんな形で像が人間の目に飛び込んできます.かといって,ツリーにARマーカーを沢山飾ってしまっては興ざめでしょう.
そこで,アプリ側で「アプリが起動している間適当な間隔でスマートフォンの位置情報を取得し,ツリーの位置情報とスマートフォンの位置情報が近くなったらツリーの方向を見るようにアラートを出す」というプログラムを書きます.
アラートに気づいた利用者はアプリを起動し,ツリーの方向にカメラをかざすと飾り付けがされたツリーがスマートフォン上に表示されます.
ロケーションベース型ARは仕組みがとても複雑になりますが,ビジョンベースとはまた異なった情報提示ができます.
位置情報の他にも天候や気温,加速度などの情報を利用して情報提示を行うアプリも存在します.
つまり,ロケーションベース型ARはその人をとりまく環境や状況を認識してAR体験を提供する手法
と言えます.
->tabと呼ばれる新サービスに移行?
この他にも様々な場面でARは利用されています!
自分で調べてみてくださいね.
ARの主な手法を説明しましたが,この2つの手法にはメリットとデメリットが存在します.
この2つの手法は,主にARを用いたい場面によって使い分けられています.
ビジョンベース型ARのメリットとしては,
計算量が少なくて済む
ARマーカーを置くことで,ARコンテンツを表示したい場所を簡単に決めることが出来る
すぐに始められるライブラリやOSS(オープンソースソフトウェア)が比較的多く揃っている
の3つが挙げられます.
理由は,
→ロケーションベース型ARは,ARコンテンツを表示する為に複雑な計算が必要になりますが,ビジョンベース型の場合画像の特徴量を計算するだけでコンテンツの表示が可能です.
→ロケーションベース型ARは,マーカーを置かなくても良い代わりに,ARコンテンツを表示するための特別な計算が必要になります.
この計算には画面内の何処に,またどんな大きさでコンテンツを表示するかなどの計算も入っており,非常に複雑です.
ビジョンベース型ARは,ARマーカーを置くことで,どこにARコンテンツを表示するか,どんな大きさで表示すればよいかといった計算を簡単に行うことができるようになります.
→AR技術が注目され始めると,ARをより簡単に扱うことができるように様々なライブラリ(プログラムの集まり)が開発されました.
ARToolKitはその代表格で,ビジョンベース型ARのコンテンツを作る際には1度は耳にするライブラリの一つです.
簡単なプログラミングさえできれば,簡単にARコンテンツを作ることが可能になりました.
便利なビジョンベース型ARにも,以下の3つのようなデメリットがあります.
マーカーを印刷して準備しておかなければならない
現実空間に違和感を生じさせる
屋外での利用が難しい
メリットの2つめで,マーカーを準備することがメリットにつながるという話をしましたが,これは同時にデメリットにもなりえます.
ビジョンベース型ARは,自分たちが作った(指定した)ARマーカーがないとARコンテンツを表示させることができません.
従って,マーカーがない場所では何の動作をさせることもできませんし,仮にARマーカーがあっても,それがARマーカーであると認識ができる角度・範囲にユーザーがいなければ,ARコンテンツを提供できません.
ビジョンベース型ARで使用されるマーカーは,基本的に幾何学的な模様が多いです.
幾何学模様というのは,私達が生活している中でそうそう目にかからない模様であるともいえます.その幾何学模様が現実空間に突然現れたらどうでしょう?明らかに違和感を感じませんか?
ARの目的は現実空間の拡張及び減衰です.いかに現実と仮想空間の間に生じるずれを少なくするかの研究も行われています.
ビジョンベース型ARは,このずれを少なくするという点では,ロケーションベース型ARに劣っているといえます.
ARマーカーを用いる大きな理由は手軽にARコンテンツを提供できる点にありますが,屋外での利用は難しいとされています.
まず,ARマーカーの多くは紙とインクを使った印刷物で作られています. 雨や雪が降った場合,ARマーカー自体が破れてしまったり,インクが滲んでしまったりして使い物にならなくなってしまう事があります.
また,ARマーカーをはりつける際には,土地やモノの所有者に許可を得なければならなかったり,場合によってはお金を払わなければならないことも出てくる可能性があります.
ロケーションベース型ARのメリットとしては
が挙げられます.
ロケーションベース型ARでは,ARコンテンツを表示したい対象物,或いはセンサの値がビジョンベース型ARでいうARマーカーの役割を果たします.
基本的に屋内でARを利用する時はビジョンベース型AR
,屋外でARを利用する時はロケーションベース型AR
を使用するとよいでしょう.
ロケーションベース型ARでは,ARマーカーを事前に用意する必要がありません.
またARマーカーを配置する必要が無いので,周囲の景観を損なうこともないため,現実空間と仮想空間の間をシームレスにつなぎ合わせることが可能です.
ロケーションベース型ARの一番のメリットは,携帯端末に搭載されているセンサの様々な値を元にしてARコンテンツを提供できることです. 以下にスマートフォンで利用されている主なセンサを紹介します.
センサ名 | 説明 |
---|---|
ジャイロセンサ(加速度センサ) | 端末の回転や重力,傾きなどを取得する |
GPS(Grovbal Positioning System) | 人工衛星を利用して,端末が地球上のどの位置にいるかを計測する |
輝度センサ | 端末がある環境の明るさを取得する |
圧力センサ | 端末がある環境の気圧を取得する |
加速度センサ | 加速度を取得する.具体的にはシェイクなどの動作を察知する |
地磁気センサ | 磁場を検知する.コンパスなどで利用される |
これらのセンサで取得できる値を元に,リアルタイムで変動するコンテンツを提供出来るのもロケーションベース型ARの醍醐味と言えます.
ロケーションベース型ARのデメリットは,ビジョンベース型ARのメリットでも話した通り,
が挙げられます.
ロケーションベース型ARの難点は計算量とその複雑さにあります.
このデメリットを解消できれば,より洗練された面白いARコンテンツを作成することができるようになるでしょう.
設問1: ビジョンベース型ARとは何か?
設問1: ビジョンベース型ARとは何か?
設問2: ロケーションベース型ARとは何か?
設問2: ロケーションベース型ARとは何か?